明日をつくる教室

そこでしかできない体験をつくる

ニセコ コテージ ボンゴ広場

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佐々木 洋平

取材日 1月 28日

Photo:牧 寛之

ニセコ町の北部の曽我地区。ニセコアンヌプリやニセコビレッジといったスキー場に程近いこのエリアには冬でもグランピングを楽しめるユニークなログハウス「ニセココテージボンゴ広場」がある。グランピングの他にも10名程度で泊まれる大きなログコテージから2名が定員のタイニーハウスなど、利用者のニーズに合わせて様々なニセコでの宿泊体験を提供されている。昔からのリピーターも多く冬も夏も例年賑わうこのボンゴ広場を、ご家族5人で経営されている佐々木洋平さんにお話を伺った。

人生を振り返ったリハビリ生活

佐々木さんはニセコで生まれ育った。ご両親がよく連れていってくれたスキーにハマり、気がつくと同年代では誰よりスキーに熱中し、練習に通っていたという。小中高校までをこのニセコエリアで過ごした。特にお父さんのスキーのスタイルに影響され、整備されたコースではなく山の中を自由に滑るフリースタイルスキーを極めていった。高校卒業後はさらなるスキルアップのためにカナダにワーキングホリデーにいったという。しかし、カナダでのスキー練習中に靭帯を損傷してしまう怪我を負ってしまったという。スキーの選手生命を断念せざるを得ないほどの大きな怪我だったいう。その後帰国し、数ヶ月の間札幌の病院でリハビリを行った。

「病院ではずっと今後の人生について考えていましたよ。」飄々と佐々木さんは語る。

選手生命が絶たれたという大きな出来事であったが、周りの支えを受ける中で自然と「社会の役に立ちたい、そのために大学に入ろう」と考え、勉学への学習意欲が芽生えてきたという。帰国後は1年間勉強して、秋田の大学に合格した。

模索の中で出した答え

大学に通いながら、交換留学でアメリカに行った。在学中も、人生への模索は続いた。「このまま普通に就職活動をして会社に入るのか?」そんな葛藤の中で出てきた答えが「ニセコが自分の帰る場所だ」ということだった。ニセコにはスキーもあるし、地元の仲間もいる。外国人や若い移住者の方々も多いので、常に新しい出会いや新しい価値観が入ってくるといった面白い文化もある。そのようなところに居心地の良さを感じ、将来ニセコに戻ることを決意したという。
ただ、ニセコに戻って実家のロッジを継ぐのか、何か自分で事業を行うのかという葛藤はあった。当時流行っていたゲストハウスに興味があった。そこで大学を休学して国内外のゲストハウスを自分の足で実際に泊まり歩いたという。この経験で多くの刺激を得た。特に感じたのが「実際にその環境で体験して得られるものがその人の価値観に大きく影響する」ということだった。だとしたら「そこでしか体験できないものを提供する仕事をしたい」そんな思いで自分の実家のロッジを拠点に新たなチャレンジを仕掛けていく道に進んで行った。

家業をベースにチャレンジ

ニセコに戻った佐々木さんは実家のボンゴ広場でグランピングを始めた。ボンゴ広場本体の方はお母さんが経営を行い、グランピングは当初佐々木さんの個人事業として行っていたそうだが、今では合併をして家族みんなで経営をしている。掃除はみんなで分担をして、お母さんは受付や食事の提供、弟さんは経理、佐々木さんは新しい取り組みをボンゴ広場に持ってくるという役割分担だそうだ。

好奇心旺盛な佐々木さんは、地域のコミュニティやネットワークを活かしてグランピング以外にも様々なものを行っている。タイニーハウスもその一つだ。

今でこそ注目を集めているタイニーハウスであるが、存在を知るとすぐに購入していち早く導入をした。シンプルで最低限の宿泊体験と、大きな窓からは羊蹄山が一望できる。ここでしか体験できないものだ。

次は何を考えているのかと聞くと、佐々木さんは「サウナですかね」と答える。そうして自作で自慢のサウナ小屋を見せてくれた。とても自作とは思えない出来栄えだ。

この前、トラックにも乗ったから持ち運びもできると目を輝かせながら語る佐々木さん。興味を持ったら徹底的に動いてしまう。一般的なテントでもサウナができないか、など様々に研究を重ねているそうだ。

サウナ自体はまだボンゴ広場では提供できないそうなのだが、完成がとても楽しみだ。
有り余る雪を利用して地域の子供たちにスキー・スノーボードで使うバンクを提供したい。
地域の親が連携して共に子供を育て合う仕組みを作りたい。
ボンゴ広場のコテージをお年寄りのデイケア用に活用したい。

これ以外にもやりたいことが尽きないと語る佐々木さん。生まれ育ったニセコの白い大地で、彼の情熱は燃えている。ここでしかできない体験を提供していることがお客さんにも伝わるから、リピートされ、愛される場所になっているのだと感じた。サービスは、それ自体のクオリティも大切だが、提供する側の人のあり方が非常に重要なことを佐々木さんは教えてくれた。佐々木さんの今後の活躍が今からとても楽しみだ。

プロフィール
Photo:牧 寛之

ニセコ コテージ ボンゴ広場

佐々木 洋平

1988年北海道ニセコ町生まれ32歳

両親の影響でフリースタイルスキーをはじめ高校卒業後、スキーのスキルアップの目的も含めワーキングホリデーでカナダへ。カナダでの靭帯の怪我を機に帰国し、20歳より秋田に大学へ入学。海外への留学や国内外のゲストハウスを通い詰める中で、実家のボンゴ広場にてグラインピングなどの新規事業の展開に至る。現在ニセコを拠点に精力的に活動中。

文責:

牧 寛之

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