明日をつくる教室

歴史をつなぐ挑戦のクラフトビール

ニセコビール株式会社

/

櫻井 繁

取材日 3月 10日

Photo:ニセコビール株式会社提供

金曜日の夜に飲みたくなるものといえば、、、そう、ビール。仕事終わりや交流の場など、さまざまな場面で多くの人がビールを楽しんでいる。ニセコ町にはクラフトビールの醸造所「ニセコブルワリー」がある。ここで作られているのが、「ニセコビール」だ。小規模で事業を運営しながらも、新しいビールの可能性を求めて日々挑戦を重ねる櫻井繁(さくらい しげる)さんのお話をうかがった。

ニセコビール株式会社の代表である櫻井さんは東京都の出身。ニセコには16年ほど前に移住し、8年前にニセコビール醸造所を立ち上げた。

インタビューをさせてもらったニセコビールの直営ビアレストラン「ニセコタップハウス」は、醸造所の2階にあり、店内を入って左手の壁側が大きな窓になっているのが特徴だ。そこからニセコ連峰やニセコ駅付近の街並みを一望することができる。この場所は元々ニセコ町の商工会の事務所だった。「お店の雰囲気も合わせて楽しんでもらえれば」と櫻井さん。店内奥に置かれているジュークボックスについて尋ねると、どうやら53年前に製造されたもののようで、重量は160kgもあるとのこと。「これね、すっごく重いんですよ。お店の中まで持ってくるのが大変で。」と嬉しそうに説明してくれた。

ビールには「スタイル」という考え方があり、それは発酵の方法、原材料の麦芽の種類、副原料に何を使うかによって異なるのだそうだ。例えば、副原料に果物を使用したり、ホップを多めに使用したりと、作り手の工夫によって独自のビールのスタイルを生み出すことができる。

ニセコブルワリーでは年間で十数種類のビールを製造している。「ビールってこんなに種類があるんだ、楽しいね。」そう言ってくれるお客さんが多いそうで、種類が多いことで、自分好みのビールを選ぶことができ、この料理にはこのビールが合う、といったようにビールと料理のペアリングも楽しむことができる。小規模で製造を行っていると、色々な挑戦をすることができ、その結果、お客さんは自分の好みの味を見つけることができる。

海外では「マイクロブルワリー」という言葉があるそうだが、それでも日本の一般的なクラフトビール醸造所の規模から見ると大きい。ニセコビールはそれよりも小さい「スモール」や「ナノ」という部類に入るのではないか、と櫻井さん。現在ニセコビールは2人体制で運営しており、1本1本丁寧に手作業で製造を行っている。小規模で行うことの大変さもあるが、「自分たちの原点でもあるので、これからもこのスタイルは変えずにやっていこうと思っている」と櫻井さんは静かに語る。櫻井さんが大切にしている思いやこだわりが伝わってくる。

ビールの醸造を始めた頃は試行錯誤でやっていたが、とあるコンテストにニセコビールを出品して賞を受賞したことから、自分自身の中で次のステップに進めるようになったと感じているそうだ。どのようなモチベーションの下にビールづくりを行っているのか尋ねると、「今は『こういうビールを飲んでみたい』という自分自身の気持ちが最初のモチベーションになっている」とのこと。櫻井さんのその言葉には、ビールづくり未経験の中、手探りで事業を進め、様々なハードルを乗り越えてきた歴史を感じ取ることができる。

櫻井さんは、ニセコビールをより多くの人に楽しんでもらいたいとのことで、「飲みやすさ」にこだわってビールを製造するよう心がけている。「これからはもっと地元の方やニセコに興味を持って移住を考えているような方にもお店に来てもらい、この風景を見ながらビールを楽しんでもらえたら嬉しい」とニセコビールを囲む未来のお客さんを想像しながら前向きに話す。ビールのラインナップがどのように変化していくのか、ぜひ楽しみに待ちたい。

プロフィール
Photo:ニセコビール株式会社提供

ニセコビール株式会社

櫻井 繁

ニセコビール株式会社代表取締役。東京都出身。16年ほど前にニセコに移住し、8年前にニセコビール醸造所を設立。年間で十数種類のビールを製造し、さまざまなビールの可能性を模索しながら挑戦を続けている。

文責:

佐々木 綾香

インタビュー一覧
お問い合わせ