明日をつくる教室

【選択肢の少ない幸せ】ニセコが教えてくれた”不便”の楽しみ方

ニセコ町地域おこし協力隊(ニセコビュープラザ直売会配属)

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張 準原

取材日 6月 9日

Photo:小坂 達広

道の駅 ニセコビュープラザでレジやSNSでの発信などを担当する張準原(じゃん じゅんうぉん)さん。その時期ごとの旬を迎えた新鮮な野菜の販売や、農家さんたちとの仕事を通して、春夏秋冬を感じながら仕事ができる働き方に魅力を感じていると言います。

「仕事と暮らしが一つになっているという感覚は東京で働いている時には感じられませんでした。ニセコの素敵な自然の中での暮らしの中に仕事があり、季節ごとの遊びも精一杯楽しむという、私がみてきたニセコの方達の生き方が、自分の中でヒットしました!」

持ち前の笑顔で元気よく語る張準原さんに、ニセコに地域おこし協力隊として移住し気づいたこと、今後やっていきたいと考えていることを伺いました。


韓国生まれ。大学生の時に子供の頃から好きだった漫画に携わる仕事がしたいと日本へ留学。卒業後は日本の不動産会社や家具メーカーで働いた後に、2021年から地域おこし協力隊で奥さんと一緒にニセコに移住。

ちょっとした不便さが魅力と知ったニセコライフ

東京で働いている時に、都会での暮らしに違和感を感じていたという張さん。前職時代に旅行で訪れた北海道に魅力を感じ、いつかはここに移住して働きたいと思っていた中で、ニセコ町で地域おこし協力隊の募集があると聞き、転職活動中だった張さんは「これは北海道で暮らせるチャンスだ」と応募したと言います。そして2021年からニセコ町に移住し、念願の北海道での暮らしを始めた張さん。早速、旅行で訪れることと暮らすことの違いを感じたと言います。

「例えば、マクドナルドに行きたい!と思っても、一番近いところが小樽とかで、車で1.5時間はかかります(苦笑)」

都会暮らしが長い中で地方移住をするとぶつかる”不便の壁”。今までは近場にあったあれやこれがない…しかし、一見 障壁とも思える不便さは、張さんにとって悪いことではなく、むしろ魅力的に映ったと言います。

「近くにないからこそ、地元の食材を使って美味しいハンバーガーを作ろうと考えるようになりました。ジャガイモも美味しいところですから、冬場は何度、自分でフライドポテトを揚げたかわかりません(笑)そしてやっぱり、食材がいいから本当に美味しいんですよ!」

手軽にいつでもどこでもフライドポテトを買って食べることのできる暮らしも良いかもしれません。しかし張さんは、地元の旬のものを使ってその時にしか食べれないもの、作れない料理を作ったり、季節に応じたアクティビティをしたり”今、ここにあるものでいかに楽しむか”を考えるようになったと言います。

「逆に今までは選択肢が多すぎて悩むことが多かったように思います。何かを食べようと思って飲食店のサイトを見れば世界中の料理を提供するお店がずらっと並んでいて、クチコミやレビューをみて美味しいお店を探して…そこに費やす時間とストレスから解放された今は、むしろ選択肢は限られていた方が人生は楽しいんじゃないかと思うようになりました」

選択肢を減らした中で、ニセコの今ある魅力をより伝える取り組みを

自分の価値観に大きな影響を与えたニセコでの暮らし。「張さんは、ニセコがどんな町になったら良いと思いますか?」と聞きました。

「ニセコ町は本当に素敵なところなので、変わらなくて良いと思います。色々なチェーン店のようなお店がたくさん増えて必要以上に便利になる必要もないのではないでしょうか。もしそういう町になったとしたら、自分は今のような気づきは得られなかった訳ですし!」

ニセコでの暮らしが気づかせてくれた”選択肢は限られていた方が幸せなこともある”という価値観。しかし、それを自分だけのものにするのではなく、自分が感じた”不便の楽しみ方”を通して”ニセコ町の魅力をより伝えるような取り組みはやってみたい”と言います。

「ニセコ町にくる観光客の方々をみていると、いつもスマホをみて情報を集めて、あちこち忙しなく移動して…という人が多いように思います。もちろん、限られたお休みの中ですから、精一杯楽しみたいという気持ちは分かりますが、個人的には、もっと選択肢を減らして”今”に集中できるような…例えば、スマホの電源を切って、写真を撮るのをやめて、綺麗だなと思った風景や、一緒にいる人たちとのかけがえのない時間を、しっかりと目と体に焼き付けたりするようなツアーなんか企画できないかな、というようなことを考えています。ニセコ町は自分にとって癒しの場所であり、救いの場所でもあります。だから、ニセコ町に訪れる皆さんにとっても、そういう癒しと充電の場所であってほしいと思ってます。」

選択肢を減らした時に、今あるニセコの魅力がより浮き立つようなことをしてみたいという張さん。ニセコビュープラザで行っている直売会でも”鮮度が良いタイミングの野菜が揃っているからこそ、今ここで食べるのが一番美味しい”という実体験に基づいて、ニセコの魅力をより伝えるような取り組みをしてみたいと言います。

「買って持って帰ったり、郵送ももちろんできるのですが、やっぱり野菜は新鮮なその瞬間が一番美味しいですから、あえて、”ここに来て、その場でしか食べれない最高の味”を体験できるような、ある種の”ちょっと不便なイベント”のようなものをできないかなと思っているんです。旬の時期、ニセコの気候と自然の中で、一番の食べごろの野菜を食べるという経験を、心と体で感じてもらいたいですね」

日本全国、いつでもどこでもどんな時も同じ味のものが食べれる、といったような種類の便利さと比べると、それは不便なことと言えるかもしれません。しかし張さんは、ニセコでの暮らしに教わった”不便が不幸ではない、むしろ人生を輝かせる”という想いを胸に、大切なことを教えてくれたニセコへの恩返しとして、自分が感じたニセコの魅力をより伝えるような取り組みをこれからも続けていきたいと目を輝かせていました。

プロフィール
Photo:小坂 達広

ニセコ町地域おこし協力隊(ニセコビュープラザ直売会配属)

張 準原

韓国生まれ。大学生の時に子供の頃から好きだった漫画に携わる仕事がしたいと日本へ留学。卒業後は日本の不動産会社や家具メーカーで働いた後に、2021年から地域おこし協力隊で奥さんと一緒にニセコに移住。

文責:

小坂 達広・佐々木 綾香

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