明日をつくる教室

ニセコからニセコ町、ニセコ町から未来へ

ニセコ町役場

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長谷部 翔馬

取材日 9月 8日

Photo:高橋 達朗

ニセコ町役場で働く長谷部翔馬(はせべ しょうま)さん。札幌で育ち、札幌の大手旅行会社に就職。 海外へのプロモーションを経験、主にシンガポールの方達に向けて、季節ごとの北海道の魅力を紹介してきた。四季がなく、雪も降らないシンガポールに暮らす方達にとって、北海道のはっきりとした四季の移り変わりは魅力的に映るそうだ。

シンガポールは国土面積の小さい国、娯楽が旅行で、海外に行く人たちが多く、オーストラリア、韓国、台湾など各国からのプロモーションがある。そんな中で北海道各地の特徴を把握しプランニングする力が今の仕事にも発揮されていると感じた。

旅行会社 から ニセコ町 そして 永田町へ

2017年、いろいろな縁もありニセコ町役場に応募した。前職でもスキーリゾートや外国人観光客が多いなど、ニセコ町のネームバリューの高さは感じていた。これまでの経験もあり商工観光課への配属を想定していたが、決まった財政係に驚いた。8月に採用され間もなく予算時期を迎え、最も忙しい業務を経験した。その後、保険福祉課での保険医療業務を経験し、内閣府へ派遣される。

内閣府って何をしているところなのか? 場所は永田町、「内閣総理大臣をトップとする内閣の重要政策に関する事務を助けるところ」とある。長谷部さんは内閣府での2年間、さらに多岐にわたる業務を経験する。

1年目は国家戦略特区の仕事、2年目は地域再生と新型コロナの臨時交付金に関わる仕事。

国家戦略特区とは、法律で規制されているものを、地域限定で緩和させて先進的に取り組んでもらおうという取り組み。現在10区域で350を超える事業が進められている。

その中で長谷部さんが担当したのは「ドローン」や「自動運転」などの近未来技術について法律を整理するという業務。これらは、「地域限定型 規制のサンドボックス制度」と呼ばれる制度の中で実験が進められている。

サンドボックスとは英語で「砂場」を意味するが、子どもたちが失敗を気にせず砂遊びをするように、既存の制約にとらわれず革新的技術の事業化に向けて取り組めるようにした制度をいう。

既存の規制のどの部分をどこまで緩和するのか関係省庁との調整が必要だった。道路交通法は警察庁、道路運送車両法は国交省、電波法は総務省など様々な省庁とのやり取りが続いた。 何か調整する技があるのか聞いてみたところ、「それぞれに想いはあるので、そこの落としどころをどう持っていくのか試行錯誤の繰り返しだった」とのこと。

各省庁の担当者は、安全面など色々なことを考えて法律を作っている。「リスクケアがすごく厳しく、良かれと思って作っている法律を下げてねと言われて単純にいいよとはならない」 と、自分が困難な状況にありながら相手への理解を持って取り組む長谷部さんのマインドの高さを感じた。

2年目の地域再生の仕事では、新型コロナの臨時交付金の申請チェックや活用事例集作成などの業務を行いながら、小さな拠点を作ろう!関係人口を増やそう!という取り組みに携わった。

「関係人口を増やす」とは、その自治体に住んでいなくても、ふるさと納税や自治体の取り組みに参加するなど何かしらの関わりを持つ人たちを増やそう、街のファンを増やそうという取り組み。

「小さな拠点」とは、山間部など、その地域を維持するために必要な商店やガソリンスタンドなどが点在していると持続が困難となるため、拠点となる場所を作り、生活に必要なインフラを集めようという取り組み。全国各地で住民が主体となり進められている。

それらのサポートや事例紹介などを行った。

永田町からニセコ町 企画環境課

これまでは、内閣府で環境モデル都市やSDGsの業務を行い、町役場へ戻った際には企画環境課で環境に関わる業務につくという流れがあったが、長谷部さんはSDGs以外の様々な業務を担当し現在にいたる。

環境については予備知識が無い状態で企画環境課の業務につき、勉強を続けながら取り組む毎日。脱炭素、省エネや地下水保全の業務を行っている。8月末に脱炭素先行地域への応募が終わり、10月末の結果発表を待っている。

脱炭素先行地域とは、先行して脱炭素および地域課題解決に取り組む地域を選定して、そこでの取り組みを他の地域へ展開し、連鎖的に「暮らしの質の向上と脱炭素」を実現しようという取り組み。 採用されると町の担当としての業務は増えるが、脱炭素などの取り組みを推進しやすくなる。

ニセコ町! オー!! ~ 子どもたちから未来へ ~

これから大きな仕事が待っている長谷部さんに、「ニセコ町」について思うことを聞いてみた。

国の組織に行って感じたのは「ニセコ町」を知っている人が多いということ。スキーリゾートというだけではなく、環境モデルなど色々な取り組みを行っているよねと言われることが多かった。地方創生、自治創生に詳しい人達はニセコ町ってすごいよねと言ってくれる。ニセコ町から来ましたと言うと「オー!!」となる。

脱炭素、省エネは周りの町村と連携し、チームニセコとして取り組まなければならないと思うが、まずはニセコ町だと思うとのこと。長谷部さん自身、 SDGsや脱炭素などは今までも気になっていたが、何かやっているんだなー、旧庁舎に掲げられていたなーというくらいの感覚だった。

今の部署にきて脱炭素などの話を聞く機会が増え、現状を知っていく中で、これを町の人に伝えたいと思っている。

興味がある人たちはやっているが、みんなでやらないといけない問題。子どもの自由研究のためにSDGsの取り組みについて教えてほしいという問い合わせがあったり、学校教育でも取り組んでいたりと目に触れたり耳にする機会は増えてきていると思う。

子どもたちがやると親も知ることができる。そこからコミュニティみたいなものができて、“ニセコの再生可能エネルギーを考える” みたいになってくれたら面白いな。太陽光パネルいいけど、雪積もるよね、じゃあ縦にしてみる?そしたら発電が弱いよねって子どもたちが議論したら、まさかの切り口とか出てくるんじゃないかな。自分たちで作ってみて、使ってみて、あれこれ考えるのっていいなと思う。そんなワクワクする話がつきない時間となった。

“子どもたち、町に暮らす人たちと一緒に楽しく進んでいく” 長谷部さんの環境への取り組みが始まる。

プロフィール
Photo:高橋 達朗

ニセコ町役場

長谷部 翔馬

札幌市出身。大手旅行会社にて海外プロモーションを経験。2017年にニセコ町役場へ応募、同8月からニセコ町役場に勤務。その後、内閣府での業務を2年間経験、2022年からニセコ町役場企画環境課にて脱炭素、省エネや地下水保全の業務を行っている。

文責:

高橋 達朗

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