明日をつくる教室

ニセコと東京をつなぐ情熱の仕事人

ニセコ町地域活性化起業人

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赤星 昭江

取材日 11月 7日

Photo:佐々木 綾香

「あ、どうも~!お疲れ様です~」手を振りながらそう声をかけてきたオシャレな女性は、ニセコ町の「地域活性化起業人」として活動している赤星昭江(あかほし あきえ)さんです。柔らかい雰囲気を醸し出す赤星さんですが、実は仕事の話になると目つきがキラリと変わる、生粋の仕事人。東京の大手不動産会社に所属しながら、地域活性化起業人として新たな風を吹き込む赤星さんを取材しました。

仕事、仕事、仕事!赤星さんのこれまで

「私のパソコン、キーボードのスペースキーが取れちゃって無いんです~」と、微笑みながら話す赤星さん。どうやらキーボードを激しく打ちすぎてスペースキーが無くなってしまった模様(笑)パソコンをバッチバチに使い込むほど仕事に情熱を注ぐ赤星さんは、2021年の秋からニセコ町の「地域活性化起業人」として活動しています。

赤星さんの出身は山口県宇部市。大学までを地元山口県で過ごし、卒業後は(株)CHINTAIに就職しました。2年間勤めた大阪の事業所では、なんと入社1年目にして営業成績1位を収めたのだそう。そこでの実力が認められ、その後東京の本社への転勤が決まります。東京では同社のマガジングループに所属し、雑誌『CHINTAI』で編集の仕事に携わるようになります。

仕事にまい進し2年経った頃、26歳の時に週刊『CHINTAI』の編集長に抜てき。巻頭見開きカラーページに、赤星さんの独断と偏見で物件を紹介する「あかほし物件特集」を持つほどに。その後は、動画コンテンツの活用を進める部署へ異動し、ゼロからの事業の立ち上げを経験。その後法人営業部、グループ会社である(株)エイブルの社長室への異動など、多種多様な仕事を経験します。こんなにたくさんの仕事を経験されてきたとは…赤星さんがとてもエネルギッシュな方だということが感じられます。


雑誌『CHINTAI』の「あかほし物件特集」

実体験から形づくられた仕事の原動力

赤星さんがこれまで特に力を入れて取り組んできたのが、一人暮らしの女の子の生活をサポートするブランド「MAISON ABLE(メゾンエイブル)」のプロデュース。時間も体力もお金もギリギリになってしまいがちな一人暮らしの女の子が、ファッションやグルメ、その他さまざまな生活サービスをお得に利用できるサービスです。赤星さんは、色々なファッションを気軽に楽しめる衣服のレンタルサービスや、安価な金額でお腹いっぱいスイーツを食べられるお店など、さまざまな事業の立ち上げ・運営に携わります。


赤星さんが手がけてきた数々の取り組み。ここまで形にしてきてすごいです!

こうした取り組みに力を注ぐきっかけとなったのは、自分自身の原体験が発端となっています。

「就職して一人暮らしをはじめたとき、家賃や生活費が収入の大半を占め、過度な節約を続けているうちに食生活が乱れ、体調不良で倒れ、救急車で運ばれるという経験がありました。周りに目を向けると、実家暮らしの友人と一人暮らしの私とでは経済的な面で大きな差があることを感じました。経済的な理由で夢を諦めたり、人生の選択肢が限られてしまうようなことがないように、自身の経験から、地元を離れ、ひとり暮らしでがんばる女性を応援したいと思うようになりました。」

赤星さんが仕事をする中での核となっているのが、「不平等な状況を変えていきたい」という思い。自分自身の実体験やそこで感じた課題を、仕事を通じて解決するということが、赤星さんの人生における重要なパーツになっているようです。

「自分の負の感情に繋がっている社会課題を解決して、それがクリアになった時に、仕事の楽しさを感じたんだろうと思います。自分の人生をより良くしていくことを考えた時に、色々な要素がある中で、自分にとっては『仕事』というものがマッチしたんでしょうね。経済的な弱者が、経済によって夢を挫折しない未来を作っていきたい。そう思って日々仕事をしています。」


自分が実際に体験したからこそ、課題解決にかける思いも大きい。

初めての地方生活、ニセコ町へ

東京でさまざまな仕事を手がけてきた赤星さん。2021年の6月頃に、「地域活性化起業人」としてニセコ町で活動することを会社から提案されます。

地域活性化起業人とは、総務省が実施している制度の一つで、都市圏の民間企業で働く社員を一定期間地方で受け入れ、そのノウハウや知見を活かしながら地域独自の魅力や価値の向上等につながる業務に従事してもらい、地域活性化を図るというもの。

これまでさまざまな取り組みを通じて女の子の一人暮らしを応援してきた赤星さんでしたが、本当に彼女たちの生活レベルが向上したといえるのか、疑問が残っていました。同時に、物価が首都圏並に高いニセコエリアで、果たして地元の人たちが持続的に暮らし続けていけるのかという疑問も浮かび上がりました。

「この課題を解決するためには社会全体としての取り組みが必要なのではないか?もしかしたらニセコでそのヒントを掴めるかもしれない。」

今後のキャリアも踏まえた会社からの勧めもあり、検討の末、最終的にニセコ町で活動することを決めました。そして2021年10月 にニセコ町役場総務課に着任、今年2022年10月からは企画環境課の配属の下活動しています。


赤星さんが働くニセコ町役場の3階フリースペースにて。後ろにはニセコ連峰が!

ニセコ町での仕事、そこで知った地方らしい仕事の進め方

赤星さんがニセコ町で担当している仕事は、町のシティプロモーションと情報発信の改善。マーケティング整理を行ったうえで、夏季の宿泊率の改善や、非関係人口(ウィンタースポーツをしない層など)の誘致が課題であると考え、新しいイベント等を提案し、この1年で合宿付きプログラミング講座や女性ソリストコンサート等を開催するほか、町の新しい取り組みを発信するツールとして、ニセコ町公式noteを立ち上げたり、またニセコ町ワーケーション推進協議会という団体を立ち上げ、ワーケーション誘致も図っています。

最近では、「NIS-ECO(ニスエコ)プロジェクト」という新しい取り組みを開始した赤星さん。このプロジェクトは、SDGs未来都市であるニセコ町で、持続可能な地域の未来のために、ニセコの環境や地域資源を守り次世代へ繋いでいくための取り組みなのだそう。そのプロジェクトでの活動のひとつとして、ニセコ町のサステナブルな活動を学べる「ニセコサステナブル体験ツアー」を11月に開催しました。ニセコをより魅力的な場所にしていくために、先進的な興味深いプロジェクトを次々と打ち出しています。


赤星さんが企画に携わった「ニセコサステナブル体験ツアー」のプログラム


ツアープログラムの一つである植樹体験の様子

これまでたくさんの仕事をこなしてきた赤星さんですが、活動開始当初はこんな驚きがあったそう。

「ニセコに来て、これまでやってきた仕事とのスピード感の違いに最初は驚きました。東京だと、限られた短い時間の中で結果を出すために、必要最低限の会話のやり取りしかしないんですよね。でもこっち(ニセコ町)で打合せなどに参加していると、時間の使い方がゆったりしていて。そうすると時間も心も余裕が出てくるので、みんなが本音で話せるようになるんです。時間をかけて物事を形にしていくことが、その取り組みを継続させていくことに必要なプロセスだということにも気づきました。」

最初は働き方や環境の違いに不安や戸惑いもあったそうですが、その違いから新しい視点や学びが得られたようです。他にもこんな気づきがありました。

「地方は色んな個性を持った人がいるので、一つにまとまるのって中々難しいと思うのですが、地域全体としてそれぞれの人の個性を受け入れてみんなでやっていこうという雰囲気があって、その大切さも認識するようになりました。東京で仕事をしている時は100点だけが成功だと考えていましたが、今は100点じゃなくて90点でもいいと思えるようになりましたね。笑」

赤星さんはあたたかい表情でそう語ります。これまでと異なる環境に身をおいても、違いを受け入れて、そこから良いところを発見し吸収する、そんな前向きな姿勢にこちらも心を動かされます。


色々な気づきや学びが得られるのは、赤星さんがたくさんの地域の方々と関わって活動されてきたからこそ!

ニセコ町と東京を行き来して、より豊かな人生に

ニセコ町に来て初めて地方での生活を体験したという赤星さん。実際に暮らしてみてどのように感じているのでしょうか?

「寒いけど心はあったかいなって思います。何か失敗をした時も周りの人たちがフォローしてくれて、地域のみんなが仲間って感じがしますね。ニセコで時間を過ごす中で、人のあたたかさを感じたり、違う視点で物事を考えられたりと、心にゆとりができて物事を深く考える余裕もできました。」

ニセコの地域の魅力を感じながら、ニセコ町と東京を行き来する今の暮らしや働き方を楽しめているのだそう。

「二拠点生活って良いですね。それぞれの環境を色々楽しめますし、刺激を得られます。視点も偏らない。一箇所にいると、その世界だけになって逃げ場が無くなってしまうことがあるので、自分の居場所が色々なところにできていったら良いですよね。きっとその方が豊かだと思います。」

ニセコ町と東京の二拠点生活を実際に体験し、その良さを多くの人に広めていきたいということもあり、現在「ニセコ町ワーケーション推進協議会」の取り組みに力を入れています。ワーケーションでの滞在を利用したプログラミング合宿「ピリカスクプ」は、赤星さんや地域の若者が中心となって企画したもの。「こうした取り組みを通じて、夏季の若者の滞在者数を増やしつつ、都会の人と地方の人が交わる場所として活用されていけば」と話します。


プログラミング合宿「ピリカスクプ」の様子

最後に

ニセコ町での活動を始めて約1年。様々な人たちと一緒に仕事をする中で「人間力が上がった気がする」と、これまでの経験を振り返ります。ニセコ町と東京、それぞれに新しい風を吹かせながら、赤星さん自身もより生き生きとした豊かな暮らしを送っているようです。東京で培ってきた仕事力に、ニセコ生活で高められた人間力が加わり、さらにパワーアップした赤星さん。これからどんな活躍をされていくのか、そして自分自身の目標に向かってどのように進化していくのか、さらに期待が高まりますね!


赤星さんの照れ笑いを見て私も思わず笑顔になりました!
プロフィール
Photo:佐々木 綾香

ニセコ町地域活性化起業人

赤星 昭江

山口県宇部市出身。2009年地元山口の大学を卒業後、(株)CHINTAIに入社。多種多様な部署での仕事や事業の立ち上げ等を経験し、現在は(株)エイブルホールディングスで一人暮らし女性を応援するブランド「MAISON ABLE」をプロデュース、飲食やアパレル等の新規事業も立ち上げ。2021年10月からニセコ町の地域活性化起業人として活動を開始。ニセコ町のシティープロモーションや情報発信の改善に向けた様々なプロジェクトの企画・運営を行っている。日本金融教育推進協議会の理事等、現在所属する会社や組織内だけに留まらず、自身の思いを形にするための活動を公私にわたって行っている。

文責:

佐々木 綾香

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